支援員の仕事は、利用者さんの日常生活を支えるやりがいのある仕事です。
しかしその一方で、強い感情的な負担を抱えることの多い職種でもあります。
今回は、支援員が直面しやすいストレスの要因や、私自身が実践している「EFT(感情解放テクニック)」という感情ケアの方法を通して、心のセルフメンテナンスについてお話ししたいと思います。
支援員が抱えるストレスの特徴とは?
支援員の仕事には「感情労働」という側面があります。
利用者さんの気持ちに寄り添い、穏やかに支援を行うためには、常に冷静さと優しさが求められます。
しかし現場では、想定外の出来事や行動が頻繁に起こります。
特に、自閉症や強度行動障害のある利用者さんの中には、次のような特徴を持つ方もいます。
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食事や歯みがき、トイレなどのルーチンに強いこだわりがある
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同じ質問を繰り返す、何度も確認を求める
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自傷行為や他害行為がみられることがある
支援員としては、「次に進みたいのに動いてくれない」「突然怒り出す」「叩かれた・蹴られた」などの場面に直面することもあります。
どんなに経験を積んでも、こうした瞬間には心が揺さぶられるものです。
「感情的負担」は決して弱さではない
暴言や暴力を受け続けると、支援員であってもイライラしたり、怒りの感情を感じることがあります。
人間ですから、当然のことです。
けれど、その感情をそのまま利用者さんにぶつけることはできません。
支援の現場では、怒りを「抑え込む」場面が多くなります。
それが積み重なると、知らず知らずのうちに心が疲弊していくのです。
「怒ってはいけない」ではなく、「怒りをどう扱うか」が大切。
怒りやイライラを感じたら、まずは「今、自分は怒っているな」と気づくこと。
そして、その感情をうまく処理する方法を持っておくことが、支援員のメンタルヘルスを守る第一歩です。
職場の人間関係もストレスの要因に
もう一つ見逃せないのが、チーム内の人間関係です。
支援員の仕事は個人プレーではなく、チームでの連携が欠かせません。
しかし現場によっては、
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連携がうまくいかない
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同僚が非協力的
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意見がすれ違う
など、人間関係のストレスを感じることも少なくありません。
「利用者さんのために」という思いが強いほど、価値観の違いから衝突することもあります。
そんなときこそ、自分の感情を整理し、冷静さを保つスキルが必要なのです。
私が実践しているセルフケア「EFT(感情解放テクニック)」
私は、感情を整えるために「EFT(Emotional Freedom Techniques)」という手法を取り入れています。
EFTとは、体の「感情に関係するツボ」を軽くタッピング(指で軽く叩く)しながら、心の中にあるネガティブな感情を解放していく方法です。
臨床心理学や脳科学の分野でも研究が進められており、世界中でストレスケアの手法として広く活用されています。
何より、簡単に自分でできるという点が魅力です。
場所も道具もいらず、数分あれば実践できます。
EFTでタッピングする主な8か所
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頭のてっぺん
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眉頭
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目尻
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目の下
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鼻の下
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唇の下
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鎖骨の下(のどのくぼみから2〜3cm下、さらに横へ2〜3cm)
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脇の下 脇から約10cmほど下
EFTのやり方
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自分の感情に意識を向ける
「イライラしている」「腹が立つ」「悲しい」など、正直な気持ちを認める。 -
8つのツボを軽くタッピングする
順番は自由。呼吸を整えながら、ゆっくりと。 -
心の変化を観察する
タッピング前より少しでも落ち着いたら、それでOK。
私も夜勤中など、気持ちをリセットしたい時に数分実践しています。
たったこれだけで、感情がすっと軽くなるのを感じます。
感情を「抑える」のではなく「味わう」
支援員であっても、怒り・悲しみ・不安を感じるのは自然なことです。
むしろ、その感情を「なかったこと」にしようとする方が危険です。
大切なのは、「その感情を持った自分を否定しない」こと。
罪悪感を持たずに、感情をしっかり味わうことで、自然と心が落ち着いていきます。
EFTは、まさに**「感情を味わい尽くす」ための手法**でもあると感じています。
利用者さんへのEFT活用例
このEFTは、自分自身だけでなく、利用者さんへのケアにも応用できることがあります。
夜間など、理由もなく怒っている・落ち着かない利用者さんに対して、
頭頂部や眉間、目尻などをやさしくタッピングしてみると、穏やかになられたケースもあります。
ただし、これは接触を嫌がる方(特に自閉症の方)には不向きです。
また、日頃から信頼関係が築けている方に限ることが大切です。
眉間には「A10神経」という神経があり、ここを刺激すると自律神経が整うといわれています。
落ち着かれた利用者さんを見て、「人の心と体は密接に繋がっている」と実感しました。
感情と上手に付き合うために
支援員の仕事は、日々が「人との関わり」です。
だからこそ、自分の感情とどう向き合うかがとても大切です。
EFTのように、短時間でできるセルフケア法をひとつ持っておくと、
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感情に振り回されにくくなる
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冷静に対応できる
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利用者さんにも優しく接することができる
という効果が期待できます。
「心の余裕は、支援の質を高める」
そう実感できるようになってから、私は以前よりも穏やかな気持ちで現場に立てるようになりました。
まとめ|感情を受け入れて、自分を大切にする支援を
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支援員の仕事は感情労働。ストレスを感じるのは自然なこと
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感情を抑えず、認めることがメンタルヘルスの第一歩
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EFTタッピングは、簡単にできるセルフケア法
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自分の心を整えることで、より良い支援につながる
支援員も一人の人間です。
「利用者さんを支える人を、まず自分が支える」——そんな意識を持って、自分自身を大切にしていきましょう。


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