支援員が感じる“やりがいの瞬間”と“心が折れそうな時”

支援員をめざす方へ

支援員の仕事は、「人と関わる」ことが中心にある仕事です。
だからこそ、喜びもあれば、心が折れそうになる瞬間もあります。

この記事では、現役支援員である私が、日々の現場で感じた“やりがいの瞬間”と“しんどかった出来事”を交えながら、支援員という仕事のリアルをお伝えします。


やりがいを感じる瞬間

利用者さんの「できた!」に立ち会えたとき

支援員として一番うれしい瞬間は、やはり利用者さんが自分の力で何かを“できた”ときです。

たとえば、今までは食事の際にスプーンが使えず手づかみで食べていた利用者さん。
毎回、職員が手づかみで食べそうになるタイミングで「スプーンをつかって食べてみようか」とやんわり声をかけ続け、少しずつ実際にスプーンを持つようになり、ある日ついに自分で食べられた時――。
「すごーい、できたね!」と褒めまくると、本人もとびきりの笑顔。
その小さな一歩に立ち会えた瞬間、「この仕事をしていてよかった」と心から思いました。

初めての夜勤の記事でも触れた“便いじり”の女性も同じです。
排尿・排便をところ構わずしてしまうことが多かった彼女に対し、女性職員同士で排泄の時間や間隔を記録し、「そろそろかな」という時間にトイレに誘導。失敗しても責めず、少しずつトイレの習慣を身につけられるよう関わりを続けました。

数年後、パットの気持ち悪さを感じて自らトイレへ向かうようになったときの感動は忘れられません。
「よく出来たね」「えらいね」と褒めると、にっこり笑う彼女の顔を見て、我が子の成長を見るような気持ちになりました。

“普通の人が当たり前にできること”を諦めずに支援し続けることで、本当に少しずつでも「できること」が増えていく。
その変化を目の前で感じられるのが、支援員としての何よりの喜びです。


「ありがとう」と言われたとき

忙しい毎日の中でも、ふとした瞬間に利用者さんやご家族から「ありがとう」と言葉をもらうことがあります。
その一言で、疲れがスッと軽くなるような感覚になります。

特に、強度行動障害や精神障害を抱えるお子さんのご家族にとって、週末の一泊や短時間でも預かりができる場所は大きな支えになります。
送迎の際に「今日はこんな風に過ごされましたよ」と報告すると、「本当に助かっています」「少し休めました」と感謝の言葉をいただくことがあり、その瞬間に“人の役に立てている”という実感がこみ上げます。

支援は結果がすぐに見えにくい仕事ですが、「あなたがいてよかった」と言われる瞬間こそ、支援員の心の支えになります。


チームで支え合えたとき

支援の現場では、ひとりでは抱えきれない課題に直面することも多いです。
そんなとき、同僚が声をかけてくれたり、助けてくれた瞬間に「チームで働く良さ」を感じます。

たとえば、ある利用者さんが便失禁してしまったとき。
一人で対応している私の様子を見て、別の支援員がすぐに汚染物処理用の袋を持ってきてくれたり、他の利用者さんが近づかないように配慮してくれたり。
消毒用品を準備してくれる人もいれば、後処理を手伝ってくれる人もいました。

その時、「この現場はチームで支えているんだ」と実感しました。
入浴介助でも、肢体不自由な方の支援は連携が欠かせません。
無事に終わった時は「おつかれさま!」と声を掛け合い、達成感と安心感を共有できます。

“人を支える人を支える”という意識が、支援の現場を支えているのです。


心が折れそうになる時

思うように支援が進まないとき

どんなに丁寧に関わっても、うまくいかないことはあります。
何度声をかけても拒否されたり、支援方法を変えても成果が見えなかったり。

「自分の関わり方が間違っているのでは…」と落ち込むこともあります。
でも、時間をかけて関係を築くうちに、少しずつ信頼が生まれることも多い。

焦らず、その人のペースを大切にすることの難しさと大切さを、日々教えられます。


利用者さんの感情に引きずられてしまうとき

支援員は、利用者さんの不安や怒り、悲しみを間近で受け止める仕事です。
ときには、自分の感情が揺さぶられ、夜に思い出してしまうこともあります。

そんな時は、以前の記事で紹介したEFTタッピングをしたり、
ノートに気持ちを書き出したり、同僚に話を聞いてもらったりして気持ちを整理します。

「支援員も人間だから、落ち込む日があっていい」と思えるようになってから、心が少し軽くなりました。


人手不足や忙しさに追われるとき

現場では、どうしても人手が足りず、時間にも追われがちです。
中には非協力的な職員や、指示をきちんと聞いてくれない人もいて、
「なんでやってくれないの?」「これでは良い支援ができない」とイライラしてしまうこともあります。

「もっと丁寧に関わりたいのに、記録や次の対応で精一杯…」という日々。
それでも、どんなに疲れていても、利用者さんが笑顔で「おはよう」「ありがとう」と声をかけてくれると、
不思議と「明日も頑張ろう」と思えるのです。


心が折れそうな時を乗り越えるために

私が大切にしているのは、「完璧を求めすぎないこと」。
支援は人と人との関わりだから、正解がないのです。

利用者さんが転倒してしまったり、服薬ミスをしてしまった時など、
「自分がちゃんと支えてあげられれば」「なんで気づけなかったんだろう」と自分を責めることもあります。
命に関わることもあるので、心が折れそうになるのは当然です。

そんな時は、気持ちを一人で抱え込まず、同僚に話す・少し休む・休日に好きなことをする。
そうしてバランスを取りながら続けることが、支援員として長く働くためのコツだと思っています。


まとめ|“小さな変化”に気づける力が、支援員のやりがい

支援員のやりがいは、大きな成果よりも、日々の小さな変化の中にあります。
「昨日より少し笑顔が増えた」「今日はトイレでの排泄が1回成功した」「お昼を完食してくれた」
そんな小さな変化が、支援員にとって何よりの喜びです。

心が折れそうになることもあるけれど、利用者さんの笑顔や同僚の支えに励まされながら、
これからも“その人らしい生活”を一緒に考えていきたいと思います。

支援員の仕事は、決して楽ではありません。
でも、利用者さんの笑顔や小さな成長に立ち会える瞬間は、何ものにも代えがたい喜びがあります。
もしあなたが「人の力になりたい」と思う気持ちを少しでも持っているなら、
きっとこの仕事にやりがいを見つけられるはずです。
あなたの優しさが、誰かの毎日を支える力になります。

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