この記事では、私がこれまでに実際に経験した
「薬が足りないように見えると言われたケース」
「帰宅後の様子が普段と違うとご相談を受けたケース」
を振り返りながら、支援員として感じたことや学びをまとめています。
同じような経験をされている方にとって、少しでも安心して読み進められる内容になれば嬉しく思います。
ショート利用の場面で寄せられた2つのご意見とその背景

水薬の量が足りないように見えた際に寄せられたご意見について
毎週末に1泊2日で利用されるAさんは、精神の安定を目的としたお薬を持参されています。錠剤が飲みにくい方は水薬で処方されることも多く、Aさんの場合は、夕食後4ml・翌朝4mlを与薬できるよう、小分けの瓶に入れて持ってきてくださっています。
ある日、夕食時に瓶を確認した際、「8ml分あるのか少し分かりづらいかもしれない」と感じましたが、計量カップで慎重に4mlを量り、同僚にも確認してもらったうえで与薬しました。
翌朝も同じように量ろうとすると、残量が3mlほどであるように見え、再度同僚に確認しましたが、やはり足りない印象でした。
そのため、送迎職員から「次回は念のため、少し多めに持参していただけると助かります」とお伝えしました。ところがその日の夜、お母さまからお電話をいただきました。私は遅出勤務で施設におり、そのまま電話を受けました。
「送迎の職員さんにお薬が少ないと言われましたが、そのようなことはないと思います。こちらで量って持たせていますし、施設に着いたときにも看護師さんが確認しているはずです。余分に入っていたとしても少なくなることは考えにくいので、計量の誤差ではないでしょうか?」
お母さまは決して強い口調ではありませんでしたが、不安と戸惑いを抱えておられることが伝わってきました。
私は「そうでしたか、ご心配をおかけして申し訳ございません。与薬時の計量に何か行き違いがあった可能性もありますので、看護師にも確認いたしますね」とお伝えし、まずはお気持ちを受け止めることを大切にしました。
帰宅後のご様子に変化が見られた際に寄せられたご相談について
Bさんは毎週土曜日に1泊でショート利用されている男性で、特に外出が大好きな方です。興味のある場所を見つけると立ち止まったり、急に走り出したりすることもあるため、平日に通われている日中一時支援施設では、外出時は支援員2名体制が基本になっています。
その背景には、過去にヘルパー1名での外出中に突然走り出してしまい、一時的に行方が分からなくなり、電車に乗ってしまったという出来事があったからです。幸い1時間ほどで保護されましたが、ご家族にとっては大きな心配として残っています。
ある日、そのお父様からお電話をいただきました。
「そちらから帰宅した時、普段と少し様子が違うように感じます。平日の施設から戻った時には見られないのですが、こちらから帰ってくる日は言うことを聞きにくく、意識がどこかに向いているような感じで…。家にもすぐ入らず困っていまして、最近は電車に数駅乗らないと帰宅できない日もあって、家内も心配しております。」
その電話に対応したのは、経験豊富なベテランの男性職員でした。
「帰宅時のご様子に変化が見られているということですね。平日の施設では見られない変化とのことで、ご不安なお気持ち、とてもよく分かります。先ほど伺ったご様子については、責任者とも共有したうえで、改めてサービス管理者からご連絡し、状況を整理しながら今後の支援を確認させていただければと思いますが、いかがでしょうか。」
お父様は少し落ち着いた声になり、「はい、ぜひお願いいたします」とお話しくださいました。
現場で起こりやすい状況と親御さんが抱えやすい不安について
まず水薬についてですが、お預かりする際には、看護師がいる場合は看護師が、不在時には正職員が確認を行っています。とはいえ、実際には「余分に入っている」ケースは多くはなく、メモリぎりぎりの量で持参されることも少なくありません。
また、持参されるまでの間にキャップが緩み、わずかに漏れてしまうことがあるなど、量に影響が出ることもあります。別の利用者さんの中には、念のためもう1瓶多めに持参してくださるご家庭もありますが、それが難しい場合もあります。Aさんの場合も、以前から「万が一に備えて少し多めにお持ちいただけると助かります」とお願いしていたことが、改めて確認できました。
Aさんのお母さまは、日頃から丁寧にケアされている様子が伝わっており、疲れを抱えながらも「きちんと薬が飲めているだろうか」「安心して預けられるだろうか」と、心配しながらショートを利用されていたのだと感じました。
Bさんの場合は、平日の施設ではほぼ毎日外出し、屋外活動が日課となっています。一方で、私どもの施設では、外出よりも室内活動にゆっくり取り組む支援を進めている途中です。しかし実際には館内を歩き続けることが多く、創作活動などにはまだ意識が向きにくい状況にあります。
そのため、土曜日だけ日課が大きく変わり、“自宅へ帰るリズム”も乱れやすく、そのことがストレスにつながっている可能性もあります。ご家族にとっては「なぜこんなに帰宅が大変になってしまったのか」という戸惑いと疲労が積み重なっていたのだと思います。
安全確保と人員体制のバランスにおける現場の課題
Bさんの外出支援では、過去の行方不明の経験から複数名の支援員での見守りが必要とされています。しかし、夜間や休日は人員確保が難しいこともあり、常にマンツーマンで対応することが難しい場面があります。
また、支援員が1人の利用者さんに長時間つききりになってしまうと、ほかの利用者さんの支援が手薄になり、安全面に影響が出ることもあります。こうした状況は施設全体の構造的な課題でもあり、日々ジレンマを抱えながら工夫を続けている部分です。
親御さんが抱える「うまく育てたい」という思いとその背景
私はこの仕事に携わって9年になりますが、ショートを利用されるご家族ほど「普段はできるだけ自分たちでケアしたい」という思いを強く持っておられることが多いと感じています。
そのぶん、うまくいかない場面があると「自分の対応が悪かったのでは」と自分を責めてしまう親御さんもおられます。そうしたお気持ちが、不安や怒りという形で施設に向けられることもありますが、その根底には“我が子を大切に思う強い気持ち”があるのだと感じています。
ご意見をいただいた際に現場で行った対応と考え方
電話対応で大切にした支援員の関わり方
私もAさんの与薬を担当した職員の一人でしたが、お母さまからお電話をいただいた際、「本当に足りなかったんです」と強く伝えてしまうと、お母さまの気持ちを否定する形になってしまいます。そこで、まずはお母さまのお話をそのまま受け止めることを大切にしました。
また、Bさんのお父さまからのご連絡に対応していたベテラン職員は、何よりも最初に「親御さんの気持ちを丁寧に受け止める」姿勢を示していました。
「それはご心配でしたね」「お気持ち、よく分かります」といった言葉を添えながら、落ち着いて事実を確認し、今後の対応を明確にしていく姿は、私自身にとっても大きな学びとなりました。
施設内での情報共有と再発防止のための取り組み
・水薬の量や小分け容器の状態を、これまで以上に丁寧に確認する
・記録には「見た目の量」「キャップの状態」「服薬の様子」などを細かく残す
・送迎時に気になる点があれば、当日中にサービス管理者へ報告する
・親御さんからのご意見は必ず職員全体で共有し、支援計画に反映する
こうした取り組みを積み重ねることで、誤解や行き違いが生まれにくい環境づくりを、チーム全体で進めていきました。
支援員としてご意見対応から学んだ3つの気づき
1 ご意見を「責められた」ではなく「現場改善の手がかり」として捉える
最初はどうしても「責められているのでは」と感じ、心が落ち着かないこともありました。
しかし、時間をおいて振り返ると、親御さんが届けてくださったのは“支援をより良くするための情報”でもあると気づきました。
ご意見は攻撃ではなく、「現場を見直すためのヒント」と受け止められるようになりました。
2 記録と共有は自分と利用者さんを守る大切な習慣
「そのときの状況」を記録しておくことで、後から振り返ることができ、必要な説明を丁寧に行う助けにもなります。
忙しいと記録はつい後回しになってしまいますが、結果的に自分自身と利用者さん双方を守る大切な習慣になると感じています。
3 親御さんもまた支援を必要とする大切な当事者
支援者は、利用者さんだけでなくご家族のサポートも担っています。
中にはサポートが十分に行き届きにくいご家庭もありますが、その背景には“長い年月の疲れ”や“孤立感”“相談しにくさ”があることも少なくありません。
親御さんもまた、さまざまな思いを抱えながら日々向き合っている大切な当事者であることを、忘れずにいたいと感じています。
同じようなご意見対応で悩む支援員さんへ
その場で落ち着いて対応するための5つのステップ
1 深呼吸して気持ちを整える
2 感情ではなく「事実」を丁寧に伺う
3 速やかにチームへ共有する
4 言葉は短くゆっくり、否定せずに伝える
5 その日のうちに簡単でもメモとして残す
親御さんの気持ちに寄り添うための言葉の例
・「ご心配になりますよね。そのお気持ち、よく分かります。」
・「教えていただきありがとうございます。改善につなげていきますね。」
・「一緒に考えていけたらと思っています。」
・「次回はこのように対応してみますね。」
ご意見と向き合いながら支援の仕事を続けるために大切にしたいこと
自分の心を整えるために取り入れている小さな習慣
私は、以前にも紹介したEFT(感情解放テクニック)で心を整えたり、アロマを使って気持ちをふっと緩めたり、トレッキングやキッチン磨きのように“単純作業で無心になれる時間”を積極的に作るようにしています。こうした時間は、気持ちを切り替えるうえでとても役立っています。
支援の仕事は、相手の思いに寄り添う場面が多く、その分、自分の心が揺れやすいこともあります。だからこそ「自分の状態が整ってこそ、より良い支援につながる」と感じています。自分をいたわることも、支援の大切な一部だと思っています。
また、もう一つ大切にしているのが〈仕事に入る前の短い瞑想〉です。更衣室で目を閉じて呼吸を整え、利用者さんや仲間が安心して過ごしている様子や、自分が穏やかな気持ちで関わっている姿をイメージしてから現場に入るようにしています。
ほんの数分ですが、この習慣のおかげで心に余裕が生まれ、感情にのみ込まれにくくなりました。
今回の出来事を振り返って感じたこと
今回の記事を書きながら、改めて支援の難しさを感じました。ご意見をいただいた当時は、「こちらも精いっぱい取り組んでいるのに」「少し事情を理解してほしい」と、心の中で複雑な思いが渦巻いていました。
しかし文章として振り返るうちに、親御さんの言葉の裏には“お子さんを大切に思う気持ち”や“日々向き合っているからこその疲れ”があることを、以前より深く受け止められるようになりました。
ご意見という形で伝わってきたとしても、その根底には「うまくいかないつらさを誰かに聞いてほしい」という思いがあったのかもしれません。書き出すことで、当時抱えていたモヤモヤが整理され、自分自身の気持ちも整っていきました。
この気づきが、同じように悩みながら支援に向き合う方々の心を少しでも軽くできたら嬉しく思います。

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