現場で直面する「他害行為」への対応とメンタルケア|支援員の実体験レポート

支援員の仕事と日常
【読者の皆様へ:記事の主旨について】
本記事は、障害福祉サービスに従事する支援員の安全管理および資質向上を目的としています。
記載されている事例は、実際の体験に基づき一部加工していますが、特定の個人や障害特性を否定・攻撃する意図は一切ございません。
現場の安全性と、利用者様へのより良い支援の両立を考えるための資料としてご覧ください。

知的障害や精神的な特性のある方を支援する現場では、日々さまざまな出来事が起こります。
その中でも、多くの支援員が戸惑いや葛藤を感じやすいのが、いわゆる「他害行為(他者への攻撃)」です。

この記事では、教科書的な知識ではなく、私が支援現場で実際に直面した具体的なエピソードをもとに、現場のリアルな課題と、支援員が自分を守るための視点を共有します。

特定の個人や行為を否定するものではなく、これから現場に出る方や、今悩んでいる方への「安全な支援環境を考えるヒント」として読んでいただければ幸いです。


他害行為とは?現場で見られるSOSのサイン

「他害」とは、叩く・つねる・噛む・物を投げるなど、他者に対して物理的な危害が及ぶ行動を指します。
対象は支援員やご家族に限らず、外出中であれば周囲の方に向かってしまうリスクもあります。

しかし、これは単なる暴力ではありません。
「言葉でうまく伝えられない」「感覚過敏による不快感」「パニック」など、本人なりの理由やSOSが行動として表れているケースがほとんどです。

頭では理解していても、実際に我が身に降りかかった時、どう冷静に対処すべきか。ここからは実際の体験談です。


体験談1:距離感と衛生面での戸惑い

支援の仕事を始めて間もない頃、ある利用者Mさんとの関わりで対応に迷う出来事がありました。
特別な前触れなく、突然私の髪に唾を吐きかけて、笑いながら走り去ったのです。

周囲の先輩からは「新しい職員への関心や、構ってほしいサインかもね」と助言をもらいました。
理由があるとはいえ、生理的に受け入れがたい行動に対し、当時の私は「どう受け止めればいいのか」と強く動揺しました。

この経験は、「物理的な距離の取り方」や「ターゲットにならない位置取り」など、支援員としての身の守り方(危機管理)を真剣に考える最初のきっかけとなりました。


体験談2:言葉が引き金になるトラウマ反応

環境の変化に敏感な女性Aさんとのエピソードです。
ある日の食事介助中、私が何気なく「病院」という単語を口にした瞬間、Aさんが激しく反応し、手元の食器を投げつけるという事態が起きました。

Aさんには過去、精神科病院への入院で辛い思いをした経験があったのです。
私にとっては日常会話の一部でも、彼にとってはパニックを引き起こす「トリガー(引き金)」になってしまったのです。

「殴られた、投げられた」という事実だけでなく、「なぜその行動が起きたのか(背景要因)」を知ること、そして言葉選び一つが支援に与える影響の大きさを痛感しました。


体験談3:予測不能な動きと物損リスク

活動的でエネルギー溢れるT君の支援では、一瞬の油断がトラブルに繋がります。
衝動的に手が伸びてきて、かけていたメガネを奪われ、壊されてしまったことがありました。

「100円ショップの老眼鏡でよかった」と笑って済ませましたが、もしこれが高価なものや、ガラス製で破片が散らばっていたらと思うとゾッとします。
また、爪で引っ掻かれて出血することもありました。

  • 壊されて困るものは身につけない
  • 常に相手の動きを視界に入れておく

これらは、支援員が自分の身を守るための鉄則です。
それでも翌朝には、気持ちを切り替えて「おはよう」と声をかける。プロとしての「心の切り替え力」が最も試される場面です。


体験談4:感染症リスクと医療受診の重要性

視覚に障害がある方から、介助中に肩を強く噛まれたことがあります。
服の上からでしたが歯形がくっきり残り、痛みと内出血が数ヶ月続きました。

ここで重要なのは、「噛みつき」等の行為には感染症のリスクが伴うということです。
現場ではつい「利用者さんに悪気はないから」「我慢すればいい」と考えがちですが、遠慮せず医療機関を受診し、適切な処置を受けることも、長く働き続けるためには不可欠な判断です。


「労災」として扱われにくい現場のジレンマ

業務中に起きたケガは、本来であれば労働災害(労災)の対象です。
しかし実際の福祉現場では、「骨折などの重傷でない限り申請しにくい」「人手不足で手続きの余裕がない」といった理由で、泣き寝入りしてしまうケースも少なくありません。

利用者さんの安全が第一なのは当然ですが、「支援員の安全」が軽視されていい理由にはなりません。
小さな怪我でも記録に残し、組織として再発防止に取り組む環境づくりが求められています。


まとめ|支援員が笑顔でいるために

ご家族にとって、施設は「安心して任せられる場所」である必要があります。
そして、その安心を支えているのは、現場で働く支援員一人ひとりです。

他害行為に向き合うことは、精神的にも身体的にもタフさが求められます。
しかし、その行動の裏にある「生きづらさ」に気づき、信頼関係が築けた時の喜びもまた、この仕事ならではのものです。

「支援員が心身ともに健康であること」が、結果として利用者さんへの良い支援につながる。
そう信じて、今日もお互いに現場での支援を続けていきましょう。

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