- お薬の残量についてのご指摘をいただいたケース
- 帰宅後のご様子が普段と違うとご相談を受けたケース
これらの経験を通じて、私が支援員として感じたことや、そこから得た学びをまとめました。 同じような悩みを抱えている方にとって、少しでも心が軽くなり、安心して支援に向き合えるヒントになれば嬉しく思います。
ショートステイで実際にあったご相談事例と当時の状況

お薬の残量が合わない?服薬管理でいただいたご指摘への対応
毎週末に1泊2日でショートステイを利用される女性Aさんは、体調管理のために医師から処方されたお薬を持参されています。Aさんは錠剤が苦手なため水薬(シロップ)を使用されており、夕食後と翌朝の2回分を小分けの瓶に入れてお持ちになります。
ある日のこと、夕食時にお預かりした瓶を確認した際、「規定量が入っているか少し分かりにくいかもしれない」と感じる場面がありました。その場は計量カップで慎重に量を測り、同僚とのダブルチェックを行ったうえで服薬のサポートをしました。 しかし翌朝、残りの量を確認すると、規定より少し足りないように見えました。再度同僚と確認しましたが、やはり少ない印象を受けたのです。
そこで、送迎担当の職員を通じて「次回は念のため、少し多めにご持参いただけると助かります」とお伝えすることにしました。
その日の夜、Aさんのお母さまからお電話をいただきました。 「送迎の職員さんから『薬が少なかった』と聞きましたが、家できちんと量って持たせています。施設に到着した時にも看護師さんが確認しているはずですし、減ってしまうのは考えにくいのですが……計量の誤差ではないでしょうか?」
お母さまの口調は穏やかでしたが、その言葉からは「きちんと準備したのに」という戸惑いやご不安が伝わってきました。 私はまず、「ご心配をおかけして申し訳ございません」とお伝えし、「服薬時の計量で行き違いがあった可能性も含めて、看護師や担当者に確認いたしますね」と、お母さまのお気持ちをしっかりと受け止めるよう心がけました。
帰宅後の様子がいつもと違う…ご家庭での変化に関するご相談
Bさんは毎週土曜日にショートステイを利用されている、外出が大好きな元気いっぱいの女性です。好奇心が旺盛で、興味のある場所へ駆け出してしまうこともあるため、平日に通われている施設では、外出時に支援員必ず1名ついて見守る体制をとっています。
過去には、外出中に一時的に行方が分からなくなってしまった経験もあり、ご家族にとって「安全に外出できるか」は非常に大きな心配事となっています。
ある日、Bさんのお父様からご相談のお電話をいただきました。
「そちらから帰宅した後、普段と少し様子が違うように感じるんです。平日の施設から戻った時には落ち着いているのですが、土曜日の帰宅後は落ち着きがなく、妙にテンションが高く……もっと歩くと言って、家に入るのを嫌がったり、バスに乗らないと気が済まなかったりと、妻も心配しておりまして」
ご家庭でのご様子が普段と異なり、対応に困っていらっしゃる切実なご相談でした。 電話を受けたベテラン職員は、まずお父様のお話をじっくりと伺いました。
「帰宅後のご様子に変化があるとのこと、ご心配なお気持ちよく分かります。平日のご様子とは違うとなると、なおさら不安になりますよね。伺った内容は責任者とも共有し、改めて今後の支援についてご相談させていただけますでしょうか」
まずはお気持ちに共感し、組織として対応する姿勢をお伝えしたところ、お父様のお声も少し落ち着かれたようでした。
なぜ行き違いが起きる?現場の状況とご家族の心理的背景
なぜこうした行き違いやすれ違いが起きてしまうのでしょうか。現場の状況を少し整理してみます。
まず水薬の件ですが、施設でお預かりする際は必ずスタッフや看護師が確認を行っています。しかし、ご家庭での計量と施設での計量器具の違いや、移動中のわずかな漏れなどで、見た目の量に差が出てしまうことがあります。 Aさんのお母さまは日頃からとても丁寧にケアをされており、それゆえに「きちんと薬を飲ませたい」「安心して預けたい」という強い責任感と愛情をお持ちだったのだと思います。
一方、Bさんのケースでは「生活リズムの違い」が影響していた可能性があります。 平日の施設では外出活動がメインですが、私たちの施設では室内でゆったり過ごすことを中心としていました。この「週末だけ違う過ごし方」が、Bさんにとっては戸惑いとなり、帰宅時の不安定さにつながっていたのかもしれません。 ご家族にすれば、「なぜ土曜日だけこうなるのか」という疲労感や不安が募っていたのだと推測されます。
安全を守りながらどう支援するか・現場が抱える人員体制の悩み
外出が大好きなBさんのご希望を叶えたい一方で、安全を確保するためには複数名のスタッフによる見守りが必要です。 しかし、休日や夜間はどうしても配置できる職員の数に限りがあります。一人の利用者様に手厚く関わりすぎると、他の利用者様の安全確認が手薄になってしまうリスクもあり、このバランスをどう取るかは、多くの施設が抱える共通の課題かもしれません。
私たちも「もっとこうしてあげたい」という思いと、現実的な安全確保の間で、日々悩みながら工夫を続けています。
ご家族の「大切に育てたい」という深い愛情と不安への理解
支援の仕事に携わって9年になりますが、ショートステイを利用されるご家族の多くは、「できるだけ自分たちの手でケアしたい」「家族で支えたい」という温かい思いを持っていらっしゃいます。
だからこそ、うまくいかないことがあると「自分のやり方が悪かったのではないか」とご自身を責めてしまうこともあるようです。 時に、そうした不安や焦りが、施設への「ご意見」や「厳しい言葉」として表れることもあります。しかし、その根底にあるのは「我が子を大切に思う強い気持ち」なのだと、私は感じています。
ご指摘をいただいた時、私たちはどう動いたか・対応の具体例
お電話での対話で心がけた「まずは受け止める」姿勢
Aさんの件で私が対応した際、「確かに量は少なかったんです」と事実だけを主張してしまうと、お母さまの「きちんと準備した」というお気持ちを否定することになってしまいます。 そこで、事実は確認しつつも、まずは「お母さまのお話をそのまま受け止めること」を最優先にしました。
Bさんの件に対応したベテラン職員も同様でした。 「それはご心配でしたね」「お気持ち、よく分かります」と、ご家族の不安に寄り添う言葉を自然にかけていました。 相手の感情を受け止め、落ち着いてから事実確認や今後の対策を話し合う姿勢は、私にとって大きな学びとなりました。
チームでの情報共有と再発防止へ向けた具体的な改善策
今回の経験を活かし、現場ではミスや行き違いを防ぐため、以下の4つの具体的なアクションプランを取り入れました。
- 【確認】受け入れ時の「目視」チェック 数値の確認に加え、容器のフタが緩んでいないか、見た目の量が適切かを複数人で必ず確認します。
- 【記録】数値+「見た目」のメモ 記録には数値だけでなく、「メモリより少し少なく見える」「蓋が緩んでいた」といった視覚的な情報や、服薬時のご様子も細かく残します。
- 【報告】気づきはその日のうちに 送迎時などに少しでも気になる点があれば、先送りせず、その日のうちに責任者へ報告・共有します。
- 【共有】ご意見をチームの力に いただいたご意見は隠さずに職員全体で共有し、具体的な支援計画の改善に反映させます。
こうした「当たり前のこと」を丁寧に積み重ね、ルール化することが、ご家族との信頼関係を守り、誤解を防ぐ環境づくりにつながると実感しています。
ご意見への対応を通じて学んだ、支援者としての3つの成長
1.「責められた」ではなく「より良い支援へのヒント」と捉え直す
厳しいご意見をいただくと、最初は「責められている」「自分のミスだ」と感じてしまいがちです。 しかし、少し時間を置いて冷静になると、それは「より良い支援をするための貴重な情報」であることに気づきます。 ご意見は私たちへの攻撃ではなく、「現場を見直し、質を高めるためのヒント」なのだと捉えられるようになりました。
2.丁寧な記録と共有は、利用者様と自分自身を守るお守り
「その時、何が起きたか」を正確に記録しておくことは、後から状況を振り返る際に不可欠です。それは利用者様の安全を守るだけでなく、私たち支援員自身を守る「お守り」にもなります。 忙しい業務の中では後回しになりがちですが、詳細な記録と共有こそが、信頼関係の基盤になると痛感しました。
3.ご家族もまた、支えを必要としている大切なパートナー
私たちの支援対象は、利用者ご本人だけではありません。そのご家族へのサポートも大切な役割の一つです。 ご家族の言葉の背景には、長年の介護疲れや孤立感、あるいは「誰にも相談できない」という苦しさがあるかもしれません。 親御さんもまた、懸命に日々を過ごしている大切なパートナーであること。その視点を常に持ち続けたいと思います。
同じ悩みを持つ支援員さんへ・心を軽くするためのアドバイス
焦らず向き合うために・落ち着いて対応する5つのステップ
とっさの時でも落ち着いて対応するための、シンプルな5つのステップをご紹介します。
- 一呼吸おく:まずは深呼吸して、自分の心を落ち着かせます。
- 事実を聞く:相手の感情に巻き込まれず、「何が起きたか」の事実を丁寧に伺います。
- チーム共有:一人で抱え込まず、速やかに上司や同僚へ共有します。
- ゆっくり伝える:早口にならず、否定語(でも、だって)を使わずに伝えます。
- 記録する:記憶が鮮明なうちに、簡単でも良いのでメモを残します。
信頼関係を築くために・ご家族の心に寄り添う言葉かけの実例
とっさの言葉が出てこない時のために、いくつかのフレーズを心に留めておくと安心です。
- 「ご心配をおかけしました。そのお気持ち、よく分かります」
- 「貴重なことを教えていただきありがとうございます。今後の改善につなげます」
- 「〇〇さんが安心して過ごせるよう、一緒に考えていけたらと思います」
- 「次回からは、このように対応させていただきますね」
長く支援を続けるために・自分の心を健やかに保つセルフケア
リフレッシュも仕事のうち・心を整えるための小さな習慣づくり
支援の仕事は感情労働の側面も大きく、知らず知らずのうちに心が疲れてしまうことがあります。私は、アロマの香りでリラックスしたり、単純作業に没頭して無心になったりする時間を意識的に作っています。
また、仕事に入る前に「数分間のプチ瞑想」を取り入れるのもおすすめです。 更衣室で目を閉じ、深呼吸をして、「今日も穏やかな気持ちで利用者さんと接する自分」をイメージします。たったこれだけでも、心に余裕を持って現場に入ることができます。
「自分自身をいたわること」も、良い支援を続けるための大切な仕事の一部だと考えています。
おわりに・経験を振り返って感じた支援の奥深さと希望
この記事を書きながら、改めて支援という仕事の奥深さを感じています。 ご意見をいただいた当初は、「精一杯やっているのに……」と心がざわつくこともありました。しかし、こうして振り返ってみると、厳しい言葉の裏側には、ご家族の深い愛情や日々の葛藤が隠されていたのだと気づかされます。
「ご意見」の根底にあるのは、「もっと良くしたい」「分かってほしい」という切実な願いなのかもしれません。 今回の私の経験が、同じように現場で奮闘されている支援員さんの心に届き、明日の支援への小さな活力になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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